文字の出現は、人類にとって画期的な出来事でした。
なぜなら、離れた場所とやりとりしたり、後世に記録を残したりできるようになったからです。
文字は古代文明ごとに独自に発達して、メソポタミア、エジプト、インダス川流域では紀元前2500年前に生まれ、クレタ島、中国、メソアメリカでも考案されました。
この記事では、
- 文字の軌跡の年表
- 文字の歴史を紹介
について書いていきます。
好きな箇所から読んでみてください。
- 貨幣(紙幣)の歴史
- 金属加工の歴史
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世界の文字の年表
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ここでは先史時代に壁画を使って情報を伝達した時代から、携帯電話を扱うまでの年表をまとめました。
文字の年表
- 先史時代
- 壁画
- 紀元前3300年
- 楔形文字
- 紀元前3200年頃
- 古代エジプトのヒエログリフ
- 紀元前1900年頃
- 中国文字
- 紀元前8世紀
- ギリシアのアルファベット
- 紀元前6世紀頃
- 羊皮紙(ようひし)
- 100年
- ローマ・アルファベット
- 4世紀
- 写書
- 7世紀
- アラビア文字
- 7世紀〜9世紀
- 彩飾写本
- 1450年頃
- 印刷技術の発明
- 1867年〜1868年
- タイプライター
- 1884年
- 万年筆
- 1971年
- デジタル時代に突入
- 1990年〜現在
- テキストメッセージ
文字の役割を担っていた壁画

洞窟の壁に残された壁画は、最古のもので2万5000年前までさかのぼります。
他者が理解できる情報の記録という意味で文字の前身とされています。
シュメール人が楔形文字を考案

厳密な意味での最初の文字は、メソポタミアのシュメール人が考案しました。
先を尖らせた葦で、湿った粘土板に楔のような記号を刻み、あとで乾燥させました。
楔形文字は、シュメール人の絵文字から発達して、粘土板に葦の茎や金属のペンを押し付けて記したため、楔に似た形になりました。
楔形文字で記録されたものは、宗教関係・数学・天文・歴史・法律・裁判記録など多岐に渡ります。
19世紀前半、ドイツのグローテフェントとイギリスのローリンソンらが解読。
古代における絵文字の役割

絵文字は古代の通信形態のひとつでした。
絵文字は単語の音を伝える訳ではないので、厳密には文字ではないと考える研究者もいます。
例えば、紀元79年のポンペイの住宅に掲げられていたモザイク画と現代の標識はどちらも同じ警告を発しています。
また、どんな言語でも
- カニス (ラテン語)
- シアン (フランス語)
- フント (ドイツ語)
- ドッグ (英語)
- いぬ (日本語)
これらの単語は「犬」という同じ概念だが、音は言語によって異なります。
用途が限定される絵文字だが、通りの標識、地図、衣服のタグなどに幅広く使われています。
4世紀まで使われた古代エジプトのヒエログリフ

紀元前3200年頃、楔形文字より100年遅れてヒエログリフ(神聖文字)が誕生しました。
絵文字の一種で単語だけでなく音を表す記号であり、紀元4世紀まで使われました。
エジプト文字は、
- 画像の左のヒエラティック(神官文字)
- 画像の右のヒエログリフ(神聖文字)
に分けて書かれます。
右のヒエログリフは、絵のような記号が使われます。
左のヒエラティックは、右から左へと読みます。
これらの二つの文字に加えて、古代エジプト文字には最も簡略化された書体である民衆文字(デモティック)があります。
以下三つの
- ヒエラティック(神官文字)
- ヒエログリフ(神聖文字)
- 民衆文字 (デモティック)
を併せてエジプト文字といいます。
ヒエラティック(神官文字)、ヒエログリフ(神聖文字)、民衆文字(デモティック)を合わせて「エジプト文字」と称されます。
現存する最古の中国文字の誕生
紀元前1990年頃に現存する最古の中国文字(甲骨文字)が1899年に発見。
殷墟から発掘された亀甲や獣骨に刻まれた文字。
漢字の祖型でもあり、ト辞ともいいます。
殷王の名や祭祀・狩猟・農業・戦争などに関する占い文があることが判明されました。
河南省安陽市小屯を中心とする殷朝後期の都の遺跡の総称。
1899年、劉鉄雲らが出土した亀甲や獣骨から文字を発見。
巨大な王墓や神殿の跡、亀甲、獣骨、青銅器、象牙細工品、貝製品、白陶などが発見されました。
2017年、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界の記憶」(世界記憶遺産)に、中国の甲骨文字が登録されました。
ギリシアのアルファベット

紀元前1150年頃にレヴァント地域(現在のシリアからシナイ半島の地域)でつくられた最初のアルファベットには子音しかありませんでした。
その一部だったフェニキア文字が交易を通してギリシア人が改良して、24文字からなるギリシア文字を作りました。
動物の皮で作られた羊皮紙

動物の皮を乾燥・処理して作る羊皮紙は、紀元前6世紀頃からパピルスに代わる筆記媒体として広く使われるようになりました。
羊皮紙の種類には、動物の皮によって性質が異なります。
主に、
- 羊
- 薄くて柔らかいが、製造には手間がかかる
- 仔羊
- 一般的にヴェラム(子羊や子やぎなどの薄く上質な皮)と呼ばれる
- 最高級の皮紙であるため重要な文書に使われた
- 山羊
- イタリアの羊皮紙の多くが、山羊で作られた
- 鹿
- 表面が手触りがしなやか
- 豚
- 日本では原皮が手に入りやすい
の皮が使われました。
ヨーロッパ全土で使われるようになったアルファベット

ローマ人は、ラテン語を記すのにギリシア文字を借用しました。
ローマ帝国の時代にアルファベットは、ヨーロッパ全土に広まり、私信や雇用郵便に使われました。

ローマ帝国には公的な郵便制度はありませんが、郵便は旅行者や特定の場所にメッセージを届けるように頼まれた人(その家の奴隷や自由民が多い)が配達しています。
職業として配達人を行っている人もいて、料金をとって特定の場所の特定の人に郵便を届けていました。
ローマ人が考案した写本が広まる
4世紀頃に羊皮紙の巻物に代わって写本が普及し始めます。
ローマ人が考案した写本は、キリスト教と共に広まりました。
世界で最も使われるようになったアラビア文字の誕生

アラビア文字はイスラム教の聖典であるコーランを記すために使われました。
今では、ラテン文字、漢字に次いで世界で3番目に使用者数が多い文字体系です。
彩飾写書が広まる

中世初期(7世紀〜9世紀)、文字はキリスト教のテキストを模写することで広まっていきました。
なかでも彩飾写本は、精巧な飾りを施した大文字や挿絵など装飾性が強いです。
15世紀に印刷技術の発明

出典: ヨハネス・グーテンベルク(Wikipedia)
中世までは、手書きによる模写に労力がかかるため文字を読み書きできない人も大勢いました。
しかし、1450年頃ドイツ人のグーテンベルクが活版印刷技術を発明したことで文字の歴史に転機が訪れます。
組み替え可能な活字を使った印刷機は、人の手に文字を届きやすいものに変えました。
その結果、1500年までだけでおよそ3万5000部のテキストが印刷されました。
また、当時高価であった聖書も国民人の手に行き渡ります。
タイプライター

レミントン・モデル I
最初の実用的なタイプライターは、アメリカ人発明家クリストファー・レーサム・ショールズの協力で完成しました。
特許を買い取ったレミントン社(当時の社名:E. Remington and Sons)が1874年にタイプライターを発売します。
タイプライターが発明され、
- 筆記業務の高速化、各種原稿の清書といった目的で使用された
- タッチタイピングが比較的容易にできるので、視覚障害者が文章を書く上で強力な助けにもなった
- 録音機が普及すると、録音した音を聞きながらタイプするテープ起こしも可能に
より多くの人に文字が届けられ、人と人が文字をやりとりする回数も増えました。
最初の実用的な万年筆
1884年、最初の実用的な万年筆をつくったのは、アメリカ人発明家「L・E・ウォーターマン」でした。
ウォーターマンは、世界初の毛細管現象を応用した万年筆「ザ・レギュラー」を完成させました。

パリ国際博覧会で金賞を受賞
1900年には、ウォーターマンのペンがパリ国際博覧会で金賞を受賞します。
ラズロ・ピロが発明したボールペン「100イヤーペン」は1940年代に普及します。
万年筆は、羽ペンに取って使われ始めました。
文字の歴史がデジタル時代に突入

1971年、レイ・トムリンソンがコンピューター同士で最初の電子メッセージを送信することに成功しました。
1980年代にパーソナルコンピューターが普及すると、電子メールも爆発的に普及されました。
2013年の時点で39億の電子メールアカウントが存在し、ビジネスメールだけで1日当たり1000億通が送受信されました。
レイ・トムリンソン氏(Raytheon)は、2016年に死去しました。(享年74歳)
米グーグルの電子メールサービス「Gメール」は、Twitterのアカウントで「電子メールを世の中に広めてくれてありがとう」と呟き、トムリンソン氏を追悼しました。
テキストメッセージが盛んになる

1990年代、携帯電話でテキストメッセージが送られるようになりました。
200年代に入ると携帯メールはますます盛んになり、2009年には一兆5000億以上のテキストメッセージが送信されました。
文字の歴史に関する論文をご紹介!

壁画の歴史についての論文
楔形文字の歴史について書かれてる論文
ヒエログリフと漢字の共通点について書かれてる論文
甲骨文字についての歴史
アルファベットの歴史についての論文
印刷技術の歴史についての論文
まとめ|文字の歴史は壁画から始まった

最後に文字の歴史についてまとめました。
- 先史時代は壁画で情報の伝達を行っていた
- 古代エジプトで作られたヒエログリフは、4世紀まで使われた
- 紀元前6世紀頃、羊皮紙は、パピルスに代わって筆記媒体として使われた
- ローマ帝国の時代にアルファベットは、ヨーロッパ全土に広がった
- 7世紀に世界で最も使用されているアラビア文字が生まれた
- 1450年頃、グーテンベルクが印刷技術を発明
- 1867年頃、タイプライターが完成
- 1971年、レイ・トムリンソン氏が初めて電子メッセージのやりとりに成功
- 1990年代、携帯電話の誕生
文字の歴史は、こんな出来事が起きて今に至るんだね!

ぽん太

maru
最後まで読んでいただきありがとうございます。